当社は無料で相談も受け付けているため、よく電話等で「探偵に人探しを依頼して騙されたのですけど、どうにかなりませんか?」という相談を受けることがあります。
残念なことに、悪徳業者というものは常に言い逃れの余地を残して依頼者を騙すのが普通ですので、そう簡単には法的手段で訴えることもできません。
‥‥ここでは、実際の相談内容を例にして、どんなパターンで悪徳業者に騙されるのか、そして悪徳業者を見分ける方法についても触れていきたいと思います。
電話帳を開いて調べている時、数ある広告の中からA男さんの目を引いたのは、
「発見率98%以上の実績! 完全成功報酬制!」という太字の見出しだった。
さっそく記載されていた電話番号に連絡し、その会社近くにあるという喫茶店で担当者と打ち合わせをした。料金は先払いで、発見できなければ全額返金されるという形式。
料金の仕組みなどよく分からなかったA男さんだったが、成功報酬で経費も不要、ということなので調査を依頼。対象者について知っている情報(氏名・家族構成・会社名・自宅と会社の住所)をその場で伝え、調査料金は後日あらためて55万円を振り込むことになった。最悪の場合でも料金が戻ってくるのだから、特に危険を感じることもなくA男さんは全額振込みを済ませた。
そして待つこと3週間あまり。A男さん宅に報告書が郵送された。「対象者の所在を確認」ということで、報告書内には対象者の所在が書かれていた。さすがはプロの仕事だ、と感心したA男さんは、さっそくその住所地を訪れた。
‥‥しかし、何かがおかしい。書かれていた住所地に間違いないはずなのに、その小さなハイツは明らかに無人。事情を説明して管理会社に調べてもらっても、やはり内部は埃を被ったままの空室であった。戸惑うA男さんは、帰宅後すぐに自分が依頼した探偵社に連絡してみた。
ほどなく電話応対に出てきた担当者からは、「確かに本人の所在は確認しました。それでいないというのならば、既に別の場所へ引っ越したのでしょう」という返事。本人がいたという証拠写真については「尾行調査ではないから撮影の必要がない」。どんな方法で調査したのかについては「それは企業秘密なので答えられない」の一点張り。
結局、A男さんは対象者への債権を回収できないばかりか、本当に調査したのかどうかも疑わしい探偵社に多額の料金を取られる羽目になってしまった。
短大卒業後に外資系の企業で事務職を続けていたB子さんは、4年間にわたる同僚男性との交際の後、めでたくゴールインすることになった。しかし喜びにあふれる一方で、B子さんには気がかりなことがあった。10代後半のころに付き合っていた別の男性に、ひどい言葉を叩き付けて別れてしまったという過去がB子さんにはあったのだ。そんなことを根に持つ男性でないことはB子さんも承知していたが、どうしても人生の大事な節目に謝罪して自分の中で決着を付けておきたい、と考えて男性(昔の交際相手)の所在調査を依頼することにした。
インターネット上で格安な人探し調査を検索した結果、最も料金が安かったのは「行方調査4000円」という関西地方の探偵社。40000円の間違いではないか、と最初は目を疑ったらしいが、確かに「4000円」と書かれている。
その探偵社にメールで問い合わせをしたところ、親切にも担当者の携帯電話番号まで付いて返信されてきた。携帯電話で応対した男性は、朗らかな声で「うちは最新の全国データベースを持っていますから、絶対に見付かりますよ」と答えた。
これで安心したB子さんは、指定された口座に4000円を入金して対象者の氏名・生年月日・当時の住所・当時の勤務先をメールで送信。探偵社からの連絡を待った。
しばらく後、探偵社からB子さんに連絡が入った。「対象者の住所がほぼ判明したが、どうしても実地調査が必要」という話であった。もう少しで全て判明します、と自信ありげに言われたB子さんは、実地調査料金と経費を合計して56000円の追加支払いに応じた。
‥‥しかし、待てども待てども連絡は来ない。しびれを切らしたB子さんは、何度も電話とメールで催促してみたが、メールの返信はなし。携帯電話に至っては、呼び出し音が鳴る前から留守番電話に切り替えられる始末。この状態が2週間続いた時点で、B子さんは「騙された」と気付いたそうである。
そのような経緯で当社に相談が来たが、B子さんから聞かされた相手の探偵社名は、以前から当社もたびたび被害相談を受けている探偵社だったのだ。
このケースでは、被害額が6万円で済んだが、もっと巧妙なケースだと、さらに被害が拡大した可能性もある。